箕輪 良行1
1みさと健和病院 救急総合診療研修顧問

連絡先 箕輪良行(yoshim@kouseikai-k.com) 〒341-8555 埼玉県三郷市鷹野4-494-1
原稿受付 2026年4月22日/掲載承認 2026年8月12日

抄録

 自治医科大学に応募する受験生が東京都も減少している.卒後3年間都立基幹病院で研鑽した医師たち124人(2025年7月現在)は4~5年目,7~8年目離島勤務,6,9年目後期研修というスケジュールが典型である.自治医科大学医学部全体で最近2年間に義務年限内の卒業生2,221人中へき地等勤務の1,047人のうち島にいるものが117人である.外海離島が任地となっている島根県,佐賀県,長崎県,沖縄県等11道都県のうちへき地診療所が外海診療所に限定されているのは東京都だけである.東京都124名の卒業生のうち義務年限後に専門領域で教授職に在職中(退職を含む)8名,公立公的病院管理者・院長3名,行政機関幹部職2名であり,離島勤務の診療経験を海外誌に7編報告した.45年間に離島診療の環境を支援する仕組みは救急患者のヘリ搬送,画像情報ネットワーク化,代診医派遣,SNSカンファレンスが実施されてきた.特に御蔵島,青ヶ島,母島等5つの外海小規模離島では医師1人,看護師1~2人で臨床検査,画像検査を自ら実施している.東京都卒業医が単独診療を継続してきた事実は高いブランド性を有する.東京都卒業医は全員離島派遣をこなしているため,義務年限内に専門医研修プログラムを調整できれば総合診療科専門医資格を取得できる.

キーワード:外海離島診療所勤務,自治医科大学東京都卒業医,ブランド性,へき地医療

はじめに

 社会の少子化,この20年ほど医学部地域枠が全体の2割に増えた実情,医学部への受験時選好の変化(金融資本主義とグローバル化による金融業,IT関連業への職種志向性による受験学部拡散),医学部卒業生の志向性多様化(いわゆる直美という卒業後直接美容外科へ進むこと,在宅,国際保健医療,離島など)といった要因で自治医科大学に応募する受験生が減少したと考えられる.

 東京都においても例外ではなく確実な減少がみられる.そのような背景のもとでへき地,島嶼といった地域の医療に覇気をもって積極的にチャレンジする若い医師を誘導するには,医師キャリアにおいて従来マイナスと見られてきた離島勤務を前向きにとらえる視点が重要と考える1).本稿は1979年に東京都修学資金貸与契約の医師として自治医科大学医学部を卒業し,1982年に三宅島で単独診療を3年間勤めて,その後再び1992年から3年間医師複数で勤務したあと救急医として働いた医師が著述した.2005年から現在まで産業医として生産年齢である三宅村全住民の3分の1に当たる村民の健康管理に関わっている.43年間東京都離島診療に少なからず関わってきた医師の立場から執筆する2)

東京都の外海離島診療所勤務

 卒後3年間都立基幹病院(広尾,墨東,多摩総合,駒込)で研鑽した医師たち124人(2025年7月現在)が,外海離島である東京都島嶼地域で単独診療を担うシステムを半世紀継続してきた.臨床研修2年間を都立基幹病院(広尾,墨東,多摩総合,駒込)で受けて1年間の後期研修を選択,修練した4年目から派遣され,4,5年目離島,6年目後期研修,7,8年目離島,9年目後期研修というスケジュールがこの20年間の典型となっている.

 東京都の離島は外海離島という厳しい自然環境にありながら首都東京に属するメリットを活かして自治医科大学卒業医派遣が半世紀の歴史を重ねてきた.人口規模が大きい大島,八丈島,三宅島,父島といった大規模離島から,新島,式根島,神津島といった中規模離島,そして利島,御蔵島,青ヶ島,母島という小規模離島()まで,多くは医師1人の単独勤務を卒業医124名で途絶えることなくこなしてきている.

表 東京都島嶼医療圏データ

〔地域医療情報システム;東京都島嶼医療圏 日本医師会(http://jmap.jp/cities/detail/medical care/1313)より引用改変〕

 東京都の自治医科大学受験生には,1972年大学創立当時から当該大学と学生との修学資金貸与契約に基づくへき地勤務が内陸でない伊豆諸島,小笠原諸島の島嶼部であることは明確であった.義務年限と称する診療体験に関して,1980年に派遣が始まったころから,実際に赴いた東京都卒業医は,ただの「義務」,医師の素養を高めた,十分な自己研鑽(学習,趣味),家族との豊かな時間,地域の経験を論文化,研究の基盤となった,専門医資格・医師キャリアに寄与したというような幅広い感想を抱き発言,報告を続けてきた3)

 白石4)は東京都ではないが同じ外海離島である隠岐諸島で医療機関として存続し続けている先進事例の経験をもとに,空間的・地理的困難とともに人口減少,医療介護関連専門職の不足といった社会的阻害要因が島嶼医療の困難性を分析した報告の中で,次のように展開していくことが理想であると纏めている.①内科系総合医の複数制(運動器疾患の初療,継続診療と子どもが診られる),②内視鏡や超音波診断装置を使いこなす,③適切な頻度の臓器別専門医による非常勤診療,④癌,非癌を問わぬ終末期診療の提供,⑤医療の継続性(文化として近隣医療機関との連携,住民の受療行動)を耕す,⑥医療機関のリーダーシップ(素養,努力)を啓発する,⑦地域の生き残りを賭けた将来戦略(地域の将来を担う中学生,高校生との交流など)を築く,の7項目である.このうち東京都の外海小規模離島の1~3年間の診療所勤務としては5~7番目までは達成が難しい.

 「自治医科大学医学部卒業生の現状」は平成6年(1994年)版から新たに巻末に概要図を追加記載するようになった5),6).それによると義務年限内の卒業生1,104人中へき地等勤務の521人のうち島にいるものが54人(2024年7月),1,117人中へき地勤務等526人,離島63人(2025年7月)となっている.勤務地がへき地である自治医科大学卒業医の10~11%が離島で働いている勘定である.更に外海離島がへき地勤務となっている自治体である北海道,新潟県,東京都,石川県,島根県,山口県,福岡県,佐賀県,長崎県,鹿児島県,沖縄県11道都県のうち,勤務地が外海離島診療所に限定されているのは東京都だけである.

 東京都では離島勤務への転勤が後期研修をはさまずに外海離島から別の離島へ直接異動することがあり,東京へ100~200㎞という比較的近い伊豆諸島から1,000㎞を越える小笠原諸島へ数日で赴任することも多い.実際にこのように4年間のへき地勤務を「スタンプラリーのように」島から島へ異動している.島民との心理的距離の近さを有難く感じて,「島スタンプラリーのような勤務」7)を前向きにとらえている.

 特に小規模外海離島の医師単独勤務診療所においては住民の医療ニーズに応えるための幅広い診療(小児から高齢者,救急,感染症,予防接種,在宅ケア,悪性腫瘍,整形外傷,眼科・皮膚科・耳鼻咽喉科・産婦人科・泌尿器科などの初期対応)を担える総合的な高いレベルの能力を訓練した医師の継続的な確保は歴史的に困難であった3).先述のように東京都選抜の自治医科大学卒業医の場合,1981年に島嶼派遣が始まって以来45年間,医学生在籍時代から地域実習として当該地域に必ず滞在した.卒業初期2年間の都立基幹病院(広尾,墨東,多摩総合,駒込)臨床研修中にも短期現地 研修を繰り返し,島嶼医療対応に備え先輩から後輩への縦の申し送りも続いてきた.自治医科大学在学中と卒業後に島嶼医療の実習,研修を東京都卒業生の先輩,後輩というネットワークを通して継続的に実施した結果,外海小規模離島での医師単独勤務が実現してきた.

 へき地勤務等9年間の義務年限を果たした後にそれぞれの専門領域で研究者,専門家となり研究,診療に限らず国内外でも高い評価を得ている自治医科大学卒業医が全国で多くいる.東京都でも45年経った現在,124名の卒業生のうち教授職に在職中(退職を含む)が8名,公立公的病院管理者・院長3名,行政機関幹部職2名,という現況にあり社会的に高い評価を得ている.また東京都卒業医で離島勤務の診療経験を海外の学会誌に報告した論文は引用文献を含めて7編あり,素晴らしい学術的成果となっている8)~11).いずれも東京都の卒業医である自治医科大学 松原茂樹教授が主催するCRST(Clinical Research Support Team in Jichi Medical University: 自治医科大学卒業生や地域医療従事者の研究活動を支援するチーム)経由で論文が作成されている.中でも徳重潤一医師による小笠原村で硬膜外血腫に対して施行したキルシュナー鋼線による血腫除去の事例報告は例外的で驚嘆されるもので,当時のグローバルな外傷治療スタンダードであるATLSでも記載がなく外海航行中の船舶上で穿頭術訓練を受けたことがある外科医であれば施行することもありうるというアメリカ外科学会外傷委員会のコメントを聞いたのみである.また学会,学術誌報告にはないが東京都卒業医で離島派遣終了後に東日本大震災被災地である石巻市(落合紀宏医師)や双葉町(山下巧医師)の診療活動,あるいは呼吸器外科専門医としてのキャリアをリタイアした後に北海道の町立厚岸病院で総合医として従事している小檜山律医師といった事実がある. 

外海離島診療所勤務のサポート体制の進化,発展

 過去45年間に東京都の離島診療の環境は改善されてきた.診療環境を支援する事業としては東京都単独の施策として救急患者のヘリコプター搬送体制の整備,画像情報の伝送,ネットワーク化.離島振興法や自治医科大学や地域医療振興協会の支援による単独診療を支援して常駐医師の島外出張時の代診医派遣,SNSを利用したカンファレンス開催,東京都地域枠採用医師の島嶼派遣がある.これらのサポートシステムが外海離島診療所勤務医にとって有用になるよう順次整備されてきた.

1.救急患者のヘリコプター搬送体制の整備

 外海孤立離島で救急医療と言えばヘリコプターによる患者搬送が現地の住民,医療関係者にとっては救いの神であった.医師にとって相談できる関係者が限られ,入院観察できる体制がなく,何でも一人でやるしかない単独診療では患者の命を守るためにオーバートリアージや過剰診療に多少傾くことがあっても,ヘリコプターで患者を都内の専門医療機関へ数時間で搬送できるのは安心材料であった.同時に困難が併存しており,搬送要請診療所の医師がヘリコプターに同乗して本土のヘリポートや病院へ移動すると離島が無医村となる危険が生じ,帰還する診療所医師にとっては帰島する交通手段の確保が至急求められた.この問題に対応するためにヘリコプター運営基地側で添乗する医師を確保する方向が検討された.多くは収容病院医師が担ったが,1980年代半ばから自治医科大学東京都卒業医が添乗医を交代,当番でこの役割を業務として受け持つことになった.

 1980年代から伊豆七島,小笠原諸島から漸増傾向があり,年による変動はあるが年間200件程度の病院間ヘリコプター搬送の実績がある2),12),13).東京都を含めた北海道,島根県,長崎県,鹿児島県,沖縄県の6地域で横断的に調査,検討した研究が報告されていて,搬送患者の重症度判定,要請元の機材不足,診療体制不備,他の公共輸送機関の対応力,ヘリコプター搬送所要時間の多寡といった問題が指摘され検討,改善がなされてきた13).へき地離島地域における救急搬送の困難については,ヘリコプターによる長距離搬送ばかりでなく救急車でなく乗用車や漁船を利用した島内,島外搬送の問題も1990年代から報告されていた14).全国に整備されたドクターヘリシステムや海上自衛隊のヘリコプターを使った急患搬送が長崎県の外海離島,壱岐で運用されている報告も見られる15)

2.専門医による診療支援,ネットワーク環境の整備と遠隔医療の導入

 画像伝送による診断支援は都立広尾病院との間で1994年6月から全島嶼11医療機関との間で救急医療に主眼を置いた24時間体制でのテレメディカルネットワークが形成され始め,1年8ヵ月で200症例834画像が伝送されコンサルテーションされた16).中小規模離島からの伝送が多く,整形外科疾患の骨X線写真が多く伝送され,診断名特定率も92.7%と高かった.伝送目的は治療方針に関してのコンサルテーションが63%を占めた.全症例のうち160例(80%)に何らかの緊急性を認めた.25例は航空緊急搬送された.画像の伝送とコンサルテーションで緊急搬送を回避できた症例も認められた.

 1980年代に東京都卒業医が派遣された当初には整形外科,眼科,耳鼻咽喉科,精神科といった専門科診療へのアクセスが困難であった.しかし次第に,まず定期的な巡回診療,次に定期的な専門医外来の開設へと歴史的に発展してきた.最近では三宅島において眼科医と視能訓練士がペアで年3回訪れ,慢性的な疾患の診療と眼鏡,コンタクトレンズの処方を行うに至った.それ以外の診療を非眼科医である中央診療所の医師が行うことになるが,その診療サポートとしてファイリングシステム付きのスマホアタッチメント型細隙灯顕微鏡(SEC: SmartEyeCamera)を2020年から導入した17).前眼部を撮影し前眼部疾患であるヘルペス性結膜炎やアトピー性結膜炎に対して検査を実施し,本土にいる眼科専門医に遠隔でコンサルテーションするという,ネットワークを利用した遠隔診断の導入へと発展してきた.

 今後,中でも外海小規模離島診療所はサポート体制の充実が強く求められる.現時点で設置機器,医療器材,常備薬18)(緊急ワクチン,破傷風トキソイド,静脈投与抗菌薬,ノルアドレナリンなど循環作動薬,ほか),診断機器(超音波,上部消化管内視鏡,心電図モニター,X線撮影関連,CTほか),治療機器(吸引器,吸入器,シーネ,救急蘇生セットほか)を調査してリスト作成,標準化の検討といった課題がある.その際,充実には開設自治体の国民健康保険組合の運営基盤と財政力が大きく関わってくるであろう.

外海離島診療所勤務はブランドであり中でも小規模診療所勤務は最強である

 ブランド化とはマーケティングの戦略を意味し,島嶼,中でも外海離島における医療提供というサービスを関係者(住民,行政,医療従事者)に価値があると認識させてその領域での評価を高めることである.外海離島診療所勤務がそのブランド化によって価値と共に信頼を得て医療の他の領域と差別化されて,従事する医師たちを獲得することができれば戦略として成功と考えられる19).外海離島の中でも小規模離島というコンセプトは受け皿となる住民数や行政規模が小さく診療提供する従事者は限られる.上級自治体である東京都の中でも明確に意義付けられる.

 最強のブランドとして他と差別化されるサービスは外海小規模離島単独診療であり,この国の島嶼医療を全国的に広くカバーしている自治医科大学卒業医の中でも東京都卒業医が果たしてきた外海小規模離島診療所勤務という挑戦的な役割は先駆的であり20数年継続的に従事している最先端で唯一の領域である.式根島,利島,御蔵島,青ヶ島,母島という5ヵ所の小規模離島では医師1人,看護師1~2人,事務1人という体制である.検査技師による臨床検査,画像検査は不可能で医師が実施している.院内処方が限られるため院外処方による島外からの薬剤の郵送が主流である.島内に公設の救急隊がない場合もある.このようなハードルを越えてこの数十年間,自治医科大学東京都卒業医が継続的な単独診療を供給してきたことは他に例がない.

 その実践例として人口474人の式根島診療所で単独診療していた岩瀬翔医師が2023年に式根島における健康の社会的決定要因(SDH: social determinants of health)を整理して介入点を明らかにする試みを学生の「ちいここ」のフィールドワーク,さらにワークショップと講演会で島民たちの場所作りを進めた20).その結果「よっちき会議」という住民活動が生まれ社会的処方を試みる実践モデルの構築に挑戦している.

 自治医科大学がへき地地域医療の医師確保という設立趣旨とともにその名を轟かせているのは医師国家試験合格率の高さで100%という実績を続けている事実である.医師国家試験の合格状況では自治医科大学が合格率全国1位を10年連続で達成しており,2025年度に100%は自治医科大学ただ1校であった.

 わが国では医師の地域偏在対策として導入された3つの制度,1960~1970年代の一県一医大政策,1972年開学の自治医科大学,2008年以降の医学部地域枠制度がある.一県一医大政策評価については,国内の医学部入学生は飛躍的に増加したが,地域偏在は不変であったことが報告されている21).Matsumotoらは,2014~2019年の6年間に新規医師免許を取得した医師を対象として,「自治医科大学」「奨学金付き地域枠」「都道県奨学金受給(奨学金のみ)」の学業成績や卒後の就職状況などを一般入学の医学部卒業生を比較した実証研究を報告している22).医師国家試験の合格率は自治医科大学卒業生が最も高く,一般卒業生と有意差があった.地域での義務的な勤務遵守率は,卒後5年後時点で自治医科大学が98%と最も高く,次いで奨学金付き地域枠90%,奨学金のみ81%であり,3群間で有意差がみられた.市区町村の人口密度で最も低い地域で就業する医師の割合は,一般卒業生と比較して,自治医科大学4.0倍,奨学金付き地域枠3.1倍,奨学金のみ2.5倍と有意に高くなっていた.比較した制度においては,ミッションの明確さ,地域志向性教育の充実度,制度内の学生や卒業生同士のつながりの強さ(集団効果),制度運用に投じられている公費の規模,義務のしばりの強さにより,それらが上述の学業成績,就業状況の違いを生んでいる可能性が指摘されている.学生・卒業生間の交流を強調した地域指向性教育は自治医科大学の最大の強みであり医師の地域偏在対策の成功したモデルである.

 一方,外海小規模離島の単独診療に関して実証的な研究は国内外で極めて限定的である.人口約500人のギリシャ・ティロス島,太平洋島嶼国ソロモン諸島,東ティモール,トンガ,バヌアツ,トリスタン・ダ・クーニャ島で単独診療の実現可能性と課題が検証されているが標準化されたアウトカム評価を伴う大規模な実証研究はない23),24),25)

 これらからは自治医科大学の東京都卒業医による外海小規模離島単独診療所勤務の継続的な事業の科学的な評価は未達であっても,ブランド性を議論する妨げとはならない.また今後,自治医科大学を志願する高校生にインパクトの一つになると期待できる.さらに臨床研修が必修化された2004年以降に市中病院でなく地域の診療所に勤務したキャリアが総合的な診療経験を有する医師のコンセプト19)となり,都会や市中での地域医療ではなく周辺の山間,離島といったへき地をターゲットとしてポジショニングしている点が最強のブランド要素である.

 人口減少の最先端地域であり限界集落という辺境「自治体」のお荷物となりつつある小さな地域の典型が島嶼である.そこでの診療経験を前向きにポジティブにとらえるトレンドが総合診療領域で萌芽して育ってきている.小徳らは「シマ思考」と概念化してみせ臨床研修必修化以降に市中病院プログラムで修練した若手医師たちが離島医療に志願してそこから学んだものが,結果として新家庭医療専門医制度で「修得すべき資質・能力(7つのコンピテンシー)」そのものであったと語っている26)

 自治医科大学東京都卒業医による持続性の確保された離島診療システムは,田口健医師(現,東京都島嶼保健所長)の尽力が大きい.夏期の学生実習,卒業医の離島派遣人事の事前調整,結婚協定による他自治体卒業の自治医科大学卒業医夫婦の派遣調整といった事柄を田口医師が担ってきた.東京都の外海離島というへき地医療の持続可能性を考えるとき,半世紀を超えて若手医師が1~3年の短期で交代しながら外海小規模離島単独診療所を継続できてきた歴史的背景で属人的要因は大きい.

 かたや自治医科大学卒業医が全国の自治体で構築してきたシステムをめぐり貢献への評価がある一方で,課題の指摘もある27),28).すなわち「長年バトンをブラッシュアップしながらつなぐことで次世代ではもっといい医療を提供できていく」「自分がいたことの証が残る経験は代えがたいもの」「まず診療所を受診し医師の意見を聞きたいと相談にきて,長きにわたり住民にとって診療所が距離の近い存在であった」という評価と,「先生が数年で変わることをマイナスに感じている」「時代に即した地域医療のあり方を考え提供し地域社会のリーダーであり続ける理想に至っていない」という指摘がある.

 2017年度から医師が19の基本領域で専門医として標榜することが厚生労働省により認められるようになり日本専門医機構が機能している.この中で総合診療科が新しく認可され地域医療での研修をその要件として,離島診療所の研修もそれに含まれる.従って東京都の場合,自治医科大学卒業の医師は全員離島派遣をこなしているため総合診療科専門医資格を取得することが可能となる.この専門医の制度ができるまでは負担感が大きく困難性が強い小規模離島勤務を実際に数年実施してきた自治医科大学東京都卒業医はそのキャリアを適切に評価される機会がなかった.沖縄県,山口県,神奈川県ではへき地勤務を当該自治医科大学卒業医師の総合診療医資格取得へと行政的に誘導し始めている.

 自治医科大学の9年間の義務年限という制度のよい面を活かして専門医の資格をおおむね3年で取得できるように調整できるのはないかと唱えて,自治医科大学の卒後振興課(現在は地域医療推進課)や地域医療振興協会の協力で都道府県の卒業医の支部会議といった横断的な仕組みを活用して卒業医のキャリア支援を見直そうとしている29).背景には医学部地域枠の入学生が増えてきて「義務の9年間で専門医も取れず卒業生が悩んでいる」という評判に反応して受験生が自治医科大学を選ばなくなるのではないかという危惧がある.

 義務年限9年間の間,へき地の診療機関へ派遣されている期間を総合診療医専門研修プログラムの中に組み入れて,見事に専門医資格を新潟県で第1号として取得した坪野俊介医師が経験をへき地・地域医療学会のシンポジウムで報告していた30).そのメリットとして希少性を挙げた.都市部においても高齢化,多疾病併存,病床削減,医療費削減の地域医療計画を背景に総合診療医の需要が在宅診療クリニックばかりでなく,大規模病院でも総合診療科の新設という形で増えているため総合診療医資格は引手あまたである,という観察である.

 近年全国の医師偏在の弊害が問題とされ,地域枠で医学部を卒業する医師を減らそうという議論も出てきている.東京都においても自治医科大学入学志願者に減少傾向がみられる.東京都島嶼医療の確保,中でも喫緊のテーマであり続けた外海小規模離島の医師確保を今後とも継続的に実現するには,特に外海小規模離島勤務キャリアが自治医科大学東京都卒業医のアイデンティティーを高めるブランドであることを積極的に宣伝することが強く望まれる.

文献

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5) 自治医科大学地域医療推進課:自治医科大学医学部卒業生の現状.令和6年12月1日発行.

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27) 荻野祐也:持続可能な離島医療 月刊地域医学 2024;38(11):1198-1200.

28) 二宮はるか:持続可能な地域医療を目指して-この4年を振り返って思うこと-.月刊地域医学 2024;38(11):1201-1203.

29) 佐藤新平:インタビュー 自治医大卒業生のキャリア形成のために.月刊地域医学 2024;38(11):1136-1144.

30) 坪野俊介:私と総合診療-専門医制度について考えること-.第18回へき地・地域医療学会,東京,2025年6月29日(学会抄録).


Minowa Yoshiyuki
Training Program of General Medicine, Misato Kenwa Hospital

Minowa Yoshiyuki (yoshim@kouseikai-k.com)
Misato Kenwa Hospital, 4-494-1, Takano, Misato, Saitama, 341-8555, Japan
Received 2026 Apr 22/Accepted 2026 Aug 12

Abstract

The number of applicants from Tokyo to Jichi Medical University has been declining. As of July 2025, 124 physicians who completed three years of training at Tokyo metropolitan hospitals typically follow a career schedule of remote island assignments in their 4th–5th and 7th–8th postgraduate years, and advanced specialty training in their 6th and 9th years. Across the entire JMU medical program, among 2,221 graduates within service obligation over the past two years, 1,047 have been assigned to rural areas, of whom 117 are working on islands. Among the 11 prefectures (including Shimane, Nagasaki, and Okinawa) that include remote oceanic islands in their assignments, Tokyo is the only one that limits placements specifically to oceanic island clinics. Among the 124 Tokyo graduates, after completing their obligation, 8 have served (or are serving) as professors in their specialties, 3 as administrators or hospital directors of public institutions, and 2 as senior officials in governmental agencies. In addition, seven papers based on their remote island clinical experience have been published in international journals. Over the past 45 years, systems supporting medical practice in remote island settings have been developed, including helicopter transport for emergency patients, imaging information networks, dispatch of substitute physicians, and SNS-based case conferences. In 5 small oceanic islands such as Aogashima, and Hahajima, a single physician with one or two nurses performs laboratory and imaging examinations independently. The fact that Tokyo graduates have continuously provided solo medical care under such conditions represents a strong professional brand. Because all Tokyo graduates complete remote island assignments, they are able to obtain board certification in general medicine within their service obligation period.

Keywords: Remote oceanic island clinics, JMU Tokyo graduate physicians, Professional branding, Rural medicine