喜舎場 朝雄
沖縄県立中部病院 呼吸器内科
連絡先 〒904-2293 沖縄県うるま市宮里281 kishabatomoo@gmail.com
原稿受付 2026年2月13日/掲載承認 2026年3月26日
抄録
本総説では,気管支拡張症・COPD・間質性肺炎の3領域について,近年のトピックを疫学・診断・治療に焦点を当てて概説する.気管支拡張症では,好中球性炎症の上流を標的とするDPP-1阻害薬が増悪抑制の新規選択肢として位置づけられつつあり今年市場に出る予定である.COPDではGOLD 2026が症例抽出とABE分類を用いた初期治療アルゴリズムを整理し,過小治療回避と継続的な患者観察を強調している.間質性肺炎では2025年の国際分類の改訂により診断確度の言語化とPPFの早期同定が重要となった.3疾患はいずれも頻度の高い慢性疾患であり,地域医療でのモニタリングと専門施設連携がアウトカムを左右する.
キーワード:気管支拡張症,DPP-1阻害薬,COPD,GOLD,間質性肺炎
はじめに
呼吸器疾患は感染症後遺症,高齢化,喫煙歴,環境,自己免疫・線維化など複数の背景因子が重なり合い,臨床像と予後が多様である.近年,(1)気管支拡張症では好中球性炎症の上流を標的とするDPP-1阻害薬が登場し,増悪抑制の新しい選択肢となりつつある1).(2)COPDではGOLDが診断の再整理とABE分類を用いた治療アルゴリズムを更新し,実地診療での拾い上げと初期治療の最適化が重視されている2),3).(3)間質性肺炎では国際分類が改訂され,形態学的パターンと診断確信度を統合したアプローチが求められる4).本稿では,これら3領域の「最近の話題」を,疫学・診断・治療のポイントに絞って概説する.
気管支拡張症:DPP-1阻害薬を中心に
気管支拡張症(非嚢胞性線維症性気管支拡張症)は,慢性の咳嗽・喀痰と反復する気道感染・増悪を特徴とし,増悪の反復がQOL(quality of life)と肺機能の低下を加速させる.診断は慢性の湿性咳嗽,胸部聴診所見での吸気早期にアクセントがあるcoarseなcrackles,ばち指などの臨床所見に加えて胸部単純写真で両側または片側のトラムラインとも呼ばれる線状影,胸部単純CTでの気道の壁肥厚・伴走する動脈より気道径の拡大・気管支径の漸減の消失などから成される.慢性副鼻腔炎の合併が多く副鼻腔気管支症候群と呼ばれることも多いので気管支拡張症を疑う場合に繰り返す鼻閉・鼻汁や嗅覚の低下などの鼻炎・副鼻腔炎の症状の有無も確認する.ERS(European Respiratory Society)ガイドラインは原因検索〔免疫不全,ABPA,NTM(Non-Tuberculous Mycobacteria)〕などと,感染制御・気道クリアランス・増悪予防を軸に管理することを推奨している5),6).日本ではNTM合併の頻度が高いとの報告があり7),8),痩せ型の中年女性の非喫煙者で中葉・舌区に気管支拡張症が見られる場合には肺MAC症の可能性を考える9).このように地域差を踏まえた病因評価が重要である.更に若年から中年女性で気管支拡張症を診断した場合に気道病変の合併が多い関節リウマチやシェーグレン症候群などの自己免疫疾患が背景に隠れている場合があり朝のこわばり,多発関節痛,目の乾燥や口腔内乾燥・う歯などを問診で確認する10),11).

図1 DPP-1阻害薬(ブレンソカチブ)の臨床試験の主要アウトカム(例:増悪率)を整理した概念図
〔文献1)の報告を基に改変し作成〕

図2 ブレンソカチブの初回増悪までの時間に関する結果の模式図
〔文献13),14)を基に改変し作成〕
病態の中心は,好中球優位の気道炎症と,細菌定着(特に緑膿菌)による炎症増幅である.好中球エラスターゼなどのセリンプロテアーゼ活性は気道上皮障害・粘液過分泌・線毛機能低下に関与し,「感染-炎症-気道損傷」の悪循環を形成する12).この上流で,好中球セリンプロテアーゼの活性化に必須の酵素であるDPP-1(cathepsin C)を阻害する経口薬(ブレンソカチブ)が開発された1)(図1).
臨床試験では,DPP-1阻害により年間増悪率が低下し,初回増悪までの時間が延長したことが示されている13),14)(図2).一方で,適応患者の選択が鍵である.実地医療では,①過去1年の増悪回数(抗菌薬・ステロイドを要した増悪,入院増悪),②緑膿菌定着の有無,③BSIやBACIなどの重症度15),16),④気道クリアランス介入(理学療法,ネブライザー)や長期マクロライドの実施状況を整理したうえで,リスクが高い群への治療選択薬に位置づけるのが現実的である.DPP-1阻害薬は「原因治療」ではなく,炎症制御による増悪抑制が主目的であるため,感染症の精査・喀痰培養の定期評価,必要なワクチン接種,併存症(喘息,COPD)への介入とセットで活用するべきである.

図3 GOLD 2026におけるCOPDのcase-finding/診断アルゴリズム
〔文献2),3)を基に改変し作成〕
エビデンスを調べる際は,増悪の定義(抗菌薬開始,受診・入院など),観察期間,ベースラインの増悪歴や緑膿菌定着割合,そして併用治療(マクロライド,吸入抗菌薬,気道クリアランス)の背景を確認する必要がある.既存の増悪予防薬としては,①長期マクロライド17)~19),②緑膿菌定着例での吸入抗菌薬20),③喘息合併例での吸入ステロイド適正化,④禁煙・ワクチン接種・栄養・リハビリテーションなどが中心である.DPP-1阻害薬は,これらの「土台」を整えたうえで,なお増悪リスクが残る患者に追加する位置づけが妥当である.日本呼吸器学会は気管支拡張症に対するマクロライド長期投与の適正使用(耐性菌・副作用・NTMへの配慮など)を提言しており21),新規薬剤の位置づけも同様に慎重な感染リスク評価が求められる.
フォローアップでは,増悪回数だけでなく,喀痰量・色調,運動耐容能,QOL(QOL-Bなど)を定期的に確認し,理学療法の継続と吸入薬使用中の患者では吸入手技を支援する.治療目標を「入院を減らす」「抗菌薬投与回数を減らす」など具体化すると共有しやすい.
疫学面では,有病率推定は分母(一般住民か専門外来か)と症例定義(画像のみか臨床診断か)で大きく変動する.日本では高齢化と画像診断の普及により偶発的に見つかる軽症例も増えており,臨床的に介入が必要な“増悪・感染反復型”を見分ける視点が重要である22).
以上より,DPP-1阻害薬は気管支拡張症の治療体系に「炎症表現型に基づく増悪予防」という新しい軸を加える薬剤であり,適切な層別化と感染予防対策・栄養管理などの併用で最大の効果が得られる.
COPD:GOLD 2026アップデートの実地診療への応用
COPDは喫煙や大気汚染などの曝露により生じる慢性炎症性疾患で,息切れ・慢性咳嗽・喀痰と気流閉塞を特徴とする.我が国のCOPD患者の95%前後は喫煙が関与しており正確な喫煙歴の確認が診断の糸口になる23).また喫煙に対する気流制限の感受性は女性の方が高く一般に女性で10Pack-year以上,男性で20Pack-year以上の喫煙歴で気流制限が生じうる24).特徴的な身体所見として頸部では閉塞性障害の場合の主な呼吸補助筋である胸鎖乳突筋の肥大,甲状軟骨下縁と胸骨上縁の隙間が2横指以下となる気管短縮がしばしば見られ胸部打診所見で過膨張を反映して左右差の無い鼓音,心拍最強点が右室の偏位によって剣状突起下で触知できる,呼吸音および心音の低下,ばち指なしなどがある25).
実地医療では「見逃し」が依然として大きな課題であり,GOLD 2026はcase-finding(拾い上げ)と診断確定の流れを明確化している2),3)(図3).具体的には,①曝露歴(喫煙,バイオマス等)と症状(労作時息切れ,慢性咳嗽・喀痰,反復性下気道感染),②既往(喘息,心不全,気管支拡張症など)を踏まえ,高齢者の現または既喫煙者でCOPDを疑えばスパイロメトリーを行い,気管支拡張薬吸入後のFEV1/FVC(Forced vital capacity)(1秒率)低下,具体的には70%未満をもって確定する.気管支喘息との鑑別には肺拡散能が重要で喘息では上肺野の血流上昇を反映して上昇しCOPDでは喫煙による呼吸細気管支および肺胞の破壊に伴う毛細血管の減少により低下する.測定はATS(American Thoracic Society)/ERS標準化に沿って再現性を確保する26).症状評価にはCATやmMRCを用い,増悪歴とあわせて重症度・リスクを把握する.日本でもCOPD診療ガイドラインが整備されている27).近年,1秒率は保持され1秒量の実測値が予測値を下回るPRISm(Proportional ratio impaired spirometry)という概念が提唱され,この群はCOPD予備軍とも位置付けられ25%は5年以内にCOPDに移行する可能性があり,特に現喫煙者の場合には禁煙が最も有効な疾患進行予防対策になる28)~30).

図4 GOLD 2026におけるABE分類に基づく初期薬物療法の概略
〔文献2),3)を基に改変し作成〕
治療は非薬物療法(禁煙,ワクチン接種,運動療法/呼吸リハビリテーション,栄養,併存症管理)が基盤である.その上でGOLDは,初期薬物療法をABE分類に基づき提案する2),3)(図4).最新のGOLDのガイドラインで最近1年以内に1回でも増悪があるE群に対してはLAMA(Long-Acting Muscarinic-Antagonist)/LABA(Long-Acting Beta-Agonist)の2剤併用を基本とし,血中好酸球数(>300/μL)や喘息合併を踏まえてICS(Inhaled corticosteroid)併用(トリプル療法)を検討する.B群でも症状が強い場合には2剤併用が選択される.トリプル療法の有効性は大規模試験で示されている31),32).ICS導入・継続は好酸球数が反応性の目安となり33),34),反復肺炎やNTM感染リスクが高い場合は慎重に適応を判断する35).
診断面の落とし穴として,高齢者では努力不足などでスパイロメトリーが不正確になり得るため,再現性確認と必要時の再検が重要である.喘息,心不全,貧血,間質性肺炎などとの鑑別も同時に行い,胸部CTは鑑別と表現型(気腫・気道病変)の把握に有用である36),37).気腫が主体の患者は一般に体型がやせ型で呼吸数も常に速く血液ガスを施行すると炭酸ガス分圧の上昇はない.一方,気道病変主体の慢性気管支炎型は普段から湿性咳嗽が多く,体型はやや太り気味のことが多く,睡眠時無呼吸症候群の合併などによる肺性心や慢性の高炭酸ガス血症に付随した下腿浮腫がよく見られる38),39).薬物療法では,LAMA/LABAを軸に症状と増悪の双方を抑える.増悪歴がある症例ではLAMA/LABAがICS/LABAより増悪抑制に優れることが示されている40).増悪時は吸入薬の追加だけでなく,禁煙支援,ワクチン接種,リハビリテーション導入,併存症(心不全,GERD,不安抑うつなど)の評価も並行して行い,半年〜1年ごとに症状・増悪・吸入手技をレビューして最適化する.糖尿病合併や気管支拡張症合併例などの肺炎リスクの高い患者や低好酸球症例ではICSの減量・中止(de-escalation)も選択肢となるが,増悪の増加には注意する33).呼吸リハビリテーションは息切れと運動耐容能を改善し,QOL改善効果も大きい41).
最近の論点として,COPDと気管支拡張症のオーバーラップ42),43),および気腫と線維化の併存の病態のCPFE(Combined Pulmonary Fibrosis and Emphysema)44),45)など,画像表現型の多様性が注目されている.オーバーラップ例では,喀痰量が多く感染性増悪が多い一方で,ICS使用により肺炎やNTMのリスクが上がり得るため35),画像と喀痰培養の情報を加えて“増悪の駆動因子”を見極めることが実臨床上有用である.CPFEは重喫煙者で圧倒的に男性が多く上肺野に気腫,下肺野に線維化病変がある症候群で生命予後に関しては良好や不良など相反する研究結果があるが,肺高血圧や下肺野の線維化病変に近接して扁平上皮癌の合併が多いのが臨床的特徴である.
まとめると,GOLD 2026の要点は「疑ったらスパイロメトリー」「ABEで過小治療を避ける」「フォローアップは原因分析と併存症介入を徹底する」にある.地域医療では,PRISm,COPD何の病態でも禁煙・ワクチン接種・リハビリテーションの実践と,吸入薬の継続的レビューが予後改善に直結する.
間質性肺炎:国際分類アップデート
間質性肺炎(Interstitial Pneumonia; IP)は,原因不明の特発性間質性肺炎(IIP)を中心に,膠原病関連,過敏性肺炎,薬剤性など多彩な疾患群を含む.近年の間質性肺炎診療は,(1)臨床情報(環境曝露・薬剤・自己免疫)による原因探索,(2)胸部HRCT(High resolution computed tomography)パターンに基づく診断確信度の評価,(3)必要に応じた気管支鏡・生検,(4)進行性線維化の同定と抗線維化治療46),47)という“流れ”で捉えると整理しやすい.問診では乾性咳嗽の2週間以上の持続,進行性の労作時呼吸困難などが重要で,身体所見では頸部での拘束性障害の主たる呼吸補助筋である中斜角筋の肥大,両側肺底部での吸気終末にアクセントのあるcrackles,ばち指などが重要な所見である.本邦の専門施設での多施設共同研究でばち指は特にIPF(Idiopathic pulmonary fibrosis)で約30%に見られるという報告があり,慢性の間質性肺炎を診断する際に極めて重要な所見である48).胸部聴診で聴取される雑音はリンパ球浸潤が主体で,肺の既存構造が比較的維持されている病態ではfineな性状で蜂巣肺で内腔に粘液貯留などが見られ,組織破壊が進行した病態ではcoarseなcracklesが聴取されることが多いが,吸気の後半に向かって雑音が増強していくことは共通している49).このようにcracklesの性状から胸部HRCT所見や病理像をある程度予測することも可能であり,cracklesの聴取される範囲の拡大と線維化病変の面積も相関することも多い50).線維性過敏性肺炎や牽引性細気管支拡張がある場合には吸気途中や後半に短時間squawkが聴取されることがある51),52).
ERS/ATSの国際分類は,MDD(Multi-Disciplinary Discussion)を通じての多職種の集学的診断を前提に,UIP(Usual Interstitial Pneumonia),Nonspecific interstitial pneumonia,Organizing pneumoniaなど形態学的パターンと代表的診断を対応づけ,さらに診断確信度の概念を明確化した4)(表1).UIPパターンはIPFの代表的所見であるが,膠原病関連ILD(Interstitial Lung Disease)や慢性過敏性肺炎でも生じ得るため,画像だけで完結させず臨床情報との統合で最終診断をつけることが重要である.今回の分類では形態学的なパターンを認識してもその原因をしっかり追求していくことが強調されている.我が国でも特発性間質性肺炎の手引きが改訂されている46).
実臨床上のポイントは2つある.第一に,「診断の確実性」を言語化し,患者と共有することである.第二に,「進行性線維化」の早期同定である.IPF以外のILDでも,肺機能低下,症状増悪,HRCT上の線維化進展が一定期間内に認められる場合はProgressive pulmonary fibrosisとして扱い47),抗線維化薬の適応を検討する.ニンテダニブは進行性線維化性ILD(IPF以外を含む)でFVC低下を抑制することが示され生命予後改善にも結びついている53).IPFに対する抗線維化薬(ニンテダニブ,ピルフェニドン)の有効性は確立している54),55).抗線維化薬は高価なのでIPFでは我が国の新しい重症度分類で血液ガス分圧の評価に加えて6分間歩行試験の有用性が顕著になっており,専門施設に紹介して指定難病の申請をすると患者側の経済的な負担も大いに軽減する56),57).間質性肺炎の予後規定因子で最も重要な急性増悪はIPFだけでなく線維化性ILDで起こり得るため,間質性肺炎の患者が特に冬場に急性呼吸不全を来した場合には積極的に疑い感染検索とステロイド高用量を中心とした抗炎症療法を並行して施行する58),59).現在の間質性肺炎の急性増悪は特発性と肺炎・検査および手術後などの誘因のある群の2群に分けて分類されるが,生命予後は診断時の重症度やLDHなどのバイオマーカーなどが規定する60)~63).
表1 特発性間質性肺炎の国際分類(主要カテゴリー)の概要〔文献4)を基に改変し作成〕

脚注: UIP Usual interstitial pneumonia; IPF Idiopathic pulmonary fibrosis; CTD Connective tissue disease; LD Interstitial lung disease; NSIP Non-specific interstitial pneumonia; BIP bronchiolocentric interstitial pneumonia; PPFE Pleuroparenchymal fibroelastosis; HP Hypersensitivity pneumonitis; DAD Diffuse alveolar damage; OP Organizing pneumonia; AFOP Acute fibrinous organizing pneumonia; RB-ILD Respiratory bronchiolitis interstitial lung disease; AMP Alveolar macrophage pneumonia; LIP Lymphoid interstitial pneumonia; MDD Multidisciplinary discussion.
表2 代表的な間質性肺炎パターンの臨床・画像・病理の特徴〔文献4)を基に改変し作成〕

脚注: UIP Usual interstitial pneumonia; HRCT High resolution computed tomography; NSIP Non-specific interstitial pneumonia; CTD -ILD Connective tissue disease associated interstitial lung disease; BIP bronchiolocentric interstitial pneumonia; HP Hypersensitivity pneumonitis; DAD Diffuse alveolar damage; AIP Acute interstitial pneumonia; ARDS Acute respiratory distress syndrome; PPFE Pleuroparenchymal fibroelastosis; OP Organizing pneumonia; AFOP Acute fibrinous organizing pneumonia.
検査の位置づけとして,Bronchoalveolar lavageは感染・肺胞出血の除外だけでなく,リンパ球増多(過敏性肺炎の支持)や好酸球増多(好酸球性肺炎,薬剤性など)を来す疾患の手がかりになる有用な検査であるが既存の間質性肺炎の急性増悪を惹起することもあり適応と有力な鑑別診断を踏まえて施行することが肝要である.組織診断については,従来の外科的肺生検に加えて近年クライオ肺生検が一部施設で実施され,末梢主体の病変で肺機能も良好な患者での外科的肺生検,末梢病変が比較的軽微で気道周囲の病変が強い膠原病関連間質性肺炎・過敏性肺炎,肺機能が悪くて胸部画像所見が既存の分類にうまく合致しない症例でのクライオ肺生検の使い分けや診断精度向上と侵襲のバランスが議論されている64).ただし,高度の呼吸不全症例では侵襲的検査が危険になり得るため,“診断のための検査”と“治療開始のタイミング”を分けて考えることが大切である65),66).
外来でのモニタリングは,症状(息切れ・咳),肺機能(FVC,DLco),酸素化(安静・労作),画像(必要時胸部HRCT)を組み合わせる.3〜6ヵ月ごとの肺機能評価を基本とし,臨床変化があれば早めに胸部HRCTを追加する47).治療効果判定は「改善」よりも「低下速度の鈍化」を目標に置くと説明がしやすい.血液検査では外来ではKL-6やSP-Dが疾患活動性,治療反応性,予後との関連があり入院患者で進行性の症例ではLDHが迅速に疾患活動性を反映することも多い61),67),68).しかし,これらのバイオマーカーや自己抗体などは補助診断として,背景の同定と病勢把握の参考になるが,単独で診断を確定するものではない.肺高血圧症,睡眠関連呼吸障害,胃食道逆流,サルコペニアといった併存症は息切れと予後に影響するため,主病変の治療と並行して評価する69).胸部画像所見の変化が軽微な割に労作時呼吸困難の進行が目立つ場合には肺高血圧を疑い,身体所見では頸静脈の怒張,胸部の触診でのparasternal heave,足首の浮腫などが診断のヒントになる70).
最後に,地域と専門施設の連携が重要である.早期に専門施設へ紹介し,MDDで診断と治療方針を共有したうえで,慢性期のモニタリングと在宅支援は地域で担う,という役割分担が高齢者に多い本疾患の現実的な地域全体での包括的ケアに結びつく.
おわりに
気管支拡張症ではDPP-1阻害薬が“増悪予防の新しい柱”となり得る一方,原因検索と基本介入の徹底,そして表現型に基づく患者選択が不可欠である.COPDではGOLD 2026が示す疾患の拾い上げとABE治療アルゴリズムを,禁煙・リハビリテーション・ワクチン接種と統合して実践することが重要である.間質性肺炎では国際分類の更新により,確信度を踏まえた説明とPPFの早期同定がより求められる.3疾患はいずれも慢性疾患であり,地域医療における継続的モニタリングと専門施設連携がアウトカムを左右する.
利益相反:開示すべきCOIはない.
生成AIの使用:あり.初稿作成・文章推敲に生成AIを使用し,最終内容は著者が責任をもって確認した.
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Cutting edge of Respiratory diseases
Tomoo Kishaba
Department of Pulmonology, Okinawa Chubu Hospital
281, Miyasato, Uruma city, Okinawa, 904-2293, Japan kishabatomoo@gmail.com
Received 2026 Feb 13/Accepted 2026 Mar 26
Abstract
This review summarizes recent advances in bronchiectasis, chronic obstructive pulmonary disease (COPD), and interstitial pneumonia with a focus on pragmatic points for daily practice. In bronchiectasis, inhibition of dipeptidyl peptidase‑1 (DPP‑1) has emerged as an upstream anti‑inflammatory approach that may reduce exacerbations in selected patients. For COPD, the GOLD (Global Initiative for Chronic Obstructive Lung Disease )2026 update clarifies case-finding and reinforces the ABE framework to optimize initial pharmacotherapy while avoiding undertreatment. For interstitial pneumonia, the updated international classification emphasizes integrated diagnosis with explicit diagnostic certainty and early identification of progressive pulmonary fibrosis (PPF) to guide antifibrotic therapy. Across these conditions, continuous monitoring, adherence to core non‑pharmacologic interventions, and timely collaboration with specialist centers are essential to improve outcomes.
Keyword: bronchiectasis, DPP‑1 inhibitor, COPD, GOLD, interstitial pneumonia