笹井 平1,髙木 三香子1
1西伊豆町田子診療所
連絡先 笹井 平(sasaihei@gmail.com) 〒410-3515 静岡県賀茂郡西伊豆町田子943-2
原稿受付 2026年2月14日/掲載承認 2026年7月5日
抄録
目的:地域診療所において高齢者にも安全かつ快適な大腸内視鏡検査を行うことを目的に,水浸法を導入し,導入前後で無鎮静率および盲腸到達率の変化を検討した.
方法:2008年より送気を用いる従来法で検査を行ってきたが,2017年から水浸法へ切り替えた.水浸法マニュアルと動画により独習で導入し,送気を行わず注水下で軸保持短縮法を応用した.
結果:腹部膨満感や疼痛が軽減し,検査に対する不快感や拒否反応は減少した.無鎮静率は高水準で推移し,盲腸到達率は向上した.重篤な合併症は認めなかった.
結論:水浸法は鎮静薬に依存せず高齢者にやさしい安全な挿入法であり,地域診療所でも導入可能で有用な手技と考えられた.
キーワード:水浸法,大腸内視鏡,地域診療所,無鎮静
はじめに
高齢化率が50%を超える静岡県西伊豆地区の無床診療所で診療を行っている.大腸癌の早期発見において便潜血検査は広く普及している一方で,二次精査としての大腸内視鏡検査を近隣で受けられる医療環境は限られている.こうした地域では,患者にとって検査を受けやすいこと,そして安全に施行できることが,診療の質を左右する重要な要素となる.
高齢患者では循環器・呼吸器疾患を合併していることも多く,鎮静薬の使用には呼吸抑制,覚醒遅延,せん妄,転倒などのリスクが伴う.そのため,地域診療所における大腸内視鏡検査では,鎮静薬に過度に依存しない「やさしい検査法」の確立が強く求められている.
私たちは2008年より地域診療所において下部消化管内視鏡検査を継続し,大腸癌やポリープの診断を行ってきた.患者負担の軽減を目的として挿入手技の工夫を重ねる中で,2017年に水浸法1)を導入し,送気を行わず注水下で軸保持短縮法2)を実践した.過疎地域の診療所で,外来診療の合間に大腸内視鏡検査を施行しているため,症例数は年間40例前後と限られているものの,導入後には患者の苦痛が明らかに軽減され,検査の受容性が向上したことを実感している.
本研究では,こうした地域診療所における水浸法導入の経験を整理し,導入前後の変化を検討した.症例数の限られた地域医療の現場においても,水浸法が実践可能であり,高齢者にやさしい大腸内視鏡検査を提供し得ることを示すことで,同様の診療現場における普及の一助となることを目的とする.
方法
1.対象症例
水浸法導入前後における無鎮静率および盲腸到達率の推移を解析するにあたり,挿入手技の変更以外の交絡因子を最小限に抑える目的で,新規大腸内視鏡システム(新規機種および内視鏡挿入形状観測装置)が整備された2015年3月から2025年12月までに実施した全大腸内視鏡検査症例を対象とした.
2.検査機器
検査には,オリンパス社製大腸内視鏡CF-HQ290IおよびCF-Q260DI(細径),大腸内視鏡挿入形状観測装置ScopeGuide UPD-3(オリンパス社製),内視鏡用送水ポンプOFP-2(オリンパス社製),内視鏡用炭酸ガス送気装置OLYMPUS UCR(オリンパス社製)を使用した.
スコープ先端には透明フードを先端約5mm突出させて装着した.送水ポンプの流量は最大値に設定した.挿入時には送気を行わず,約35℃の微温湯を用いて注水下に挿入を行った.温水は腸管平滑筋の痙攣を緩和し,腸管の過度な収縮を抑制することで挿入を容易にすると報告されている3).炭酸ガス送気装置の流量設定は最大値とした(図1).

図1 水浸法用機器の設定
3.検査術者
検査は経験12年以上の単一術者により施行された.技術的には中級レベルで,一定の熟達段階(プラトー)にある状態であった.
4.統計学的解析
水浸法導入前後における無鎮静率および盲腸到達率の推移を評価するため,導入前2年間,導入直後3年間,導入4~6年目,導入7~9年目の4期間に区分した.年間症例数が限られており,年単位では偶然変動の影響を受けやすいため,3年単位を基本とした期間区分を用いた.ただし,導入前についてはカルテの保存期間を過ぎた症例の詳細確認が困難であったため,解析可能であった2年間を導入前期間として扱った.
ロジスティック回帰解析では,無鎮静施行の成否および盲腸到達の成否を従属変数とし,4期間を順序変数として扱い,独立変数に設定した.すなわち,導入前,導入直後,導入4~6年目,導入7~9年目を順に1~4として扱い,期間経過に伴う改善傾向を評価した.また,比率の傾向を評価するためCochran–Armitageの傾向検定を併用した.統計解析には,EZR(Easy R, version 1.54; Saitama Medical Center, Jichi Medical University, Saitama, Japan)およびJASP(Jeffreys’s Amazing Statistics Program, version 0.20.0; University of Amsterdam, Amsterdam, The Netherlands)を用いた.
5.検査方法
前処置
下剤はポリエチレングリコール製剤を使用した.脱水,意識障害,腸閉塞などの偶発症を防止する目的で,独居高齢者には診療所内での内服を推奨し,自宅で内服する受診者に対しても電話により排便状況を逐次確認した.
便秘傾向のある受診者には,検査3日前より下剤(酸化マグネシウム250mg,1回2錠,1日3回)を投与した.下剤内服による脱水予防のため,乳酸リンゲル液500mLにて静脈路を確保した.前立腺肥大症や緑内障の既往がない場合にはブチルスコポラミン臭化物20mgを静注し,禁忌症例ではグルカゴンを代替薬として使用した.
内視鏡挿入手技(図2,動画)
基本的な操作は軸保持短縮法2)と同様であるが,腸管が屈曲して行き止まりとなった場合は送気を行わず,少量の水を注入し管腔を膨らませ挿入方向を探る.その際,①送水した水が流れる方向,②襞と無名溝が直交する方向,③口側から流れてくる黄色便水の方向を参考にしつつ,ターン(アングル操作でスコープ先端の左右上下移動)とローテーション(スコープ軸を時計回りまたは反時計回りに回旋する)により進行方向を把握する.虚脱した腸管を流れていく水の方向を参考にしながらスコープを進めていくことは,送気法と全く異なるところである.進行方向を把握したのち,透明フードの先端を襞に引っ掛け(フッキングフォールド),緩徐に引き抜く操作を行うと,フード先端が自然に口側へ滑るように進む.あたかも水中で内視鏡が浮いて泳いでいるような感覚である.
便秘傾向のある受診者には,検査3日前より下剤(酸化マグネシウム250mg,1回2錠,1日3回)を投与した.下剤内服による脱水予防のため,乳酸リンゲル液500mLにて静脈路を確保した.前立腺肥大症や緑内障の既往がない場合にはブチルスコポラミン臭化物20mgを静注し,禁忌症例ではグルカゴンを代替薬として使用した.

図2 ワンパターンの挿入法

直腸からS状結腸・下行結腸移行部(以下SDJ)を越えるまで(図2- ①,②)
直腸S状部(Rs)までは左ターン,反時計回りのローテーションをしながらこまめにフッキングフォールドと引き抜き操作で進み,S状結腸に入ると右ターン,時計回りのローテーションをかけながらフッキングフォールドと引き抜き操作を繰り返す.S状結腸が過長な症例でも,多くのケースでは挿入初期から腸管が短縮化され,軸保持のままSDJを越えて下行結腸へ挿入可能である.
S状結腸が冗長でループ形成を生じる症例でも送気を行わないため,ループが小さく疼痛の訴えは少ない.内視鏡挿入形状観測装置(ScopeGuide UPD-3)を用いてスコープの走行を把握しつつ,ゆっくり引き抜き操作を行ってもスコープが抜けない方向(時計回りもしくは反時計回り)に強めのスコープ軸のローテーション(トルク)を加える.トルクをかけながら,ゆっくりと引き抜くと内視鏡画像が時計もしくは反時計回りに回転する.その画像の回転方向と同方向にトルクを強めながら引き抜き操作を行うとループの解除ができる(後藤1)の提唱する定点固定法).体位は脾彎曲に達するまでは左側臥位で行い,SDJ通過時には助手が左下腹部を軽く圧迫するとスコープが通過しやすい.
下行結腸から脾彎曲を越える
脾彎曲に到達したら仰臥位に体位変換し,アップアングルで彎曲を越える.その際,最大吸気時に息止めをしてもらい横隔膜を下げた状態にし,脾彎曲を鈍角化させる.彎曲を越えるのが難しい場合には右側臥位にすると容易になることが多い.
横行結腸から肝彎曲を越え盲腸へ(図2-③,④)
横行結腸が冗長なケースでは下垂して伸展しやすく,疼痛の原因となるため,脾彎曲通過直後からスコープに反時計回りのトルクをかけ頻回に引き抜き操作を繰り返し横行結腸の短縮化を図る.横行結腸中央部までこの操作を繰り返すことで,その後の挿入時も下垂が起こりにくくなり,疼痛の軽減につながる.反時計回りのトルクと引き抜き,押し進めの操作を組み合わせて肝彎曲に達する.肝彎曲では右上にターンし時計回りのローテーションで上行結腸に挿入し,盲腸に到達する.その後は腸管内の液体や注水を吸引し,炭酸ガスを送気して観察プロセスに移行する.炭酸ガスは腸管に速やかに吸収されるため,検査後の腹部膨満感は軽度で済む.
倫理的配慮
症例エピソードで提示した症例については匿名化されており,論文公開について対象者の家族の理解と同意を文書で得た.後方視的な大腸内視鏡症例の分析研究と症例エピソードの開示については,公益社団法人地域医療振興協会倫理委員会の審査を受け承認された(承認番号20260409-02).
結果
1.定量的結果
地域診療所における大腸内視鏡受診者の年齢層
2008年より下部消化管内視鏡検査を継続し,大腸癌および大腸ポリープの診断を行ってきた.検査対象の多くは,自治体の集団検診において便潜血反応陽性となった住民であった.
年齢別にみると,男女ともに70歳代が最も多く,次いで60歳代,80歳代の順であり,受診者の大半を高齢者が占めていた(図3).

図3 全大腸内視鏡 被検者の年齢層(2018-2025)
70代が最も多く,次いで60代,80代と高齢者が大半であった.
地域における大腸癌二次スクリーニングとしての貢献
2015年から2025年までの間に,全大腸内視鏡検査405例を施行し,進行癌24例,ポリペクトミー100件を経験した(図4).これらの結果から,当診療所は地域における大腸癌二次スクリーニングとして一定の役割を果たしてきたと考えられる.
これまでに大腸穿孔や出血などの重篤な合併症は経験していない.

図4 年度別全大腸内視鏡件数,癌頻度,ポリペクトミー頻度
年間40件前後と少数であるが,癌の診断とポリープ切除で大腸癌2次スクリーニング検査に貢献している.
水浸法導入後の無鎮静率および盲腸到達率の推移
水浸法導入前は,送気を用いた軸保持短縮法により挿入を行っていたが,2016年より水浸法導入の準備を開始し,2017年から全例を水浸法で施行可能となった.
年間症例数は40例前後と少なく,習熟には一定の時間を要したが,導入後3年間の盲腸到達率および無鎮静率はいずれも90%前後で推移した.
導入前2年間,導入直後の3年間,導入後4~6年目,導入後7~9年目の4期間に区分し,無鎮静率および盲腸到達率の改善傾向について検討した.
導入4年目以降,盲腸到達率は約99%で安定し,精神疾患や知的障害などにより鎮静が必須と判断された症例を除くと,無鎮静率は約98%を維持していた(図5). 期間別の改善傾向について解析を行ったところ,無鎮静率はCochran–Armitage傾向検定でp=0.134,ロジスティック回帰解析では,期間が1段階進むごとのオッズ比は1.472,p=0.139であり,数値的な増加は認められたが統計学的に有意な傾向は認めなかった.
一方,盲腸到達率はCochran–Armitage傾向検定でp=0.00115,ロジスティック回帰解析では,期間が1段階進むごとのオッズ比は2.543,p=0.002であり,有意な改善傾向を認めた.

図5 水浸法導入後の無鎮静率と盲腸到達率の推移
水浸法導入後より無鎮静率と盲腸到達率は向上し高い水準を安定して保てるようになった.
2.質的印象:患者の苦痛軽減と術者負担の改善(表1)
水浸法導入後に最も強く実感した変化は,患者が検査を嫌がらなくなったことである.送気による腹部膨満感がなく,腸管とスコープの間に介在する水の潤滑効果により挿入抵抗が小さいため,腸管が過度に伸展されず,不快感が明らかに軽減された.
術者側においても,スコープを押し進める際に必要な力は従来法より少なく,特にS状結腸でループ形成を生じる症例では,腸管が虚脱しているためループが小さく保たれた.透明フードで襞を軽くフッキングし,水流方向に沿って挿入することで,滑るようにSDJを通過し,その直後にループ解除が可能であった.
患者の主観的症状は,「お腹を軽く押される感じ」「お腹がグニュグニュ動く程度で,それほど痛くない」といった軽度かつ一過性の不快感にとどまり,従来法と比較して疼痛は明らかに少なかった.
前処置不良例では視界不良となるものの,腸管内容を吸引し,注水により視野を確保することで盲腸到達は可能であった.腸管が菲薄な高齢者においても,虚脱状態で摩擦が少ないため,穿孔リスクは低いと考えられた.疼痛の訴えの減少は,術者の精神的負担の軽減にも寄与した. また,内視鏡挿入形状観測装置(ScopeGuide UPD-3)を併用することで,スコープ走行をリアルタイムに可視化でき,アングル操作,押し引き,ローテーション,トルク操作に直感的に反映させることが可能であった.観察時には炭酸ガス送気を行うことで,検査後の腹部膨満感が軽減され,患者満足度の向上につながった.
表1 導入後の印象

3.症例エピソード -水浸法の利点を象徴する高齢・認知症患者での経験-
認知症(MMSE 15点)および慢性腎不全(血清クレアチニン2.5mg/dL)を有する70歳代後半の男性が,便潜血反応陽性のため来院した.
疾病理解は保たれており,「大腸癌の可能性があるので検査を受けたい」と強く希望されたが,易興奮性があり,検査中の安静保持や腹部圧迫操作への協力が得られるかが懸念された.鎮静薬の使用も検討したが,腎機能低下および高齢であることから慎重にならざるを得なかった.
水浸法であれば無鎮静でも苦痛が少ないと判断し,強い拒否がみられた場合には中止する方針で検査を施行した.その結果,ほぼ無痛で10分以内に盲腸へ到達した.横行結腸に平坦隆起性病変を認め,色素散布後に拡大観察および生検を行い,処置を含めて約30分で終了した. 検査中に興奮はみられず,終了後には「なんともなかったよ」と笑顔で述べた.本症例は,無鎮静下での大腸内視鏡検査が高齢者や認知症患者においても安全に実施可能であることを示す,水浸法の利点を象徴する一例である.
考察
水を用いた大腸内視鏡挿入法は1990年代後半より報告されており,Baumannら4)はS状結腸挿入時に水を注入することで腸管が自然に直線化し,左側結腸への挿入が容易となることを報告した.この報告は,水の重みによる腸管短縮という機序を示した初期の重要な研究と位置づけられる. その後,Hamamotoら5)は無鎮静下での水注入法を用いた大腸内視鏡検査を前向きランダム化比較試験において検討し,従来の送気法と比較して患者の疼痛が少なく,挿入時間も短縮することを示した.特筆すべきは,研修医が施行した場合でも同様の効果が認められた点であり,水を用いた挿入法が術者経験に依存せず有効である可能性を示唆している.著者の診療所においても,未経験の研修医にコロンモデルで練習後に指導したところ,数回の経験で習得できたことは印象的であった.
近年,水を用いた挿入法はwater-assisted colonoscopyとして整理され,主に挿入時の腸管伸展を抑制するwater immersion(WI)と,挿入過程で水を交換しながら腸管洗浄を行うwater exchange(WE)という2つの手技概念へと発展している.本研究で用いた方法はWIの概念に基づく手技であり,送気を行わず注水下で大腸内視鏡挿入形状観測装置と軸保持短縮法を併用することで腸管伸展を抑えながら挿入を行う点に特徴がある.
水を用いた大腸内視鏡挿入法の有用性については,その後の系統的レビューにおいても支持されている.HafnerらによるCochrane Reviewでは,水注入法を用いた大腸内視鏡検査は従来の送気法と比較して患者の疼痛を軽減することが示されており,水を用いた挿入法が患者負担の軽減に寄与する有効な手技であることが報告されている6).
さらにFrazzoniらによるランダム化比較試験を対象としたネットワークメタ解析では,水を用いた挿入法のうちwater immersion(WI)とwater exchange(WE)は疼痛軽減に寄与し,water exchange(WE)は腺腫検出率(adenoma detection rate)の向上に最も有効であることが示された7).またBinmoellerらは,注水下で広基性病変を粘膜下局注せずスネアで絞扼し通電切除するUnderwater EMR(UEMR)を報告した8).これらの報告は,水を用いた挿入法が単なる疼痛軽減手技にとどまらず,大腸内視鏡検査の質の向上にも寄与し得ることを示している.
前処置不良例や挿入困難例における水を用いた挿入法の有用性も近年報告されている.Brechmannらは,腸管前処置が不良となりやすく挿入困難例が多い脊髄損傷患者を対象とした検討において,water exchange(WE)法を用いることで挿入成功率が有意に向上したことを報告している9).本研究で用いたwater immersion(WI)法においても,注水による洗浄と吸引を適宜併用することで腸管内容を除去することが可能である.特に高齢者やADL低下患者では前処置不良となることが多く,水浸法は盲腸到達率の向上に寄与すると考えられる.
本報告は,大規模データを用いた統計学的検証ではないものの,地域診療の現場において1例1例を丁寧に積み重ねてきた実践の中から得られた知見をまとめたものである.後藤らは,水浸法の習得期間は施行頻度に影響されると述べている.週5日程度の内視鏡診療を行う環境では数か月程度である一方,週1回程度の施行頻度では数年を要すると述べている1).当院では年間40〜50例程度,週1回程度の施行頻度に限られており,水浸法の安定した習熟には少なくとも3年を要した.このことは,症例数の限られた地域診療所においても,一定の期間をかけて継続することで水浸法の習得が可能であることを示している.
本研究の限界として,単施設・少数例による後方視的観察研究であり,統計学的検出力に限界がある点が挙げられる.また,水浸法そのものの効果と,術者の経時的な技術習熟の影響を完全に分離することはできない.しかし,水浸法導入後に盲腸到達率の改善を認め,無鎮静率も高水準で維持されたことは,地域診療所の実臨床において本手技が実用的である可能性を示している. 症例数こそ限られるものの,地域診療所という実臨床の現場において水浸法による大腸内視鏡挿入法の有用性を検討した点に意義がある.高齢化が進む地域医療の現場では,鎮静薬の使用が必ずしも容易ではなく,患者負担の少ない検査手技の確立が求められる.水浸法は無鎮静下でも安全かつ比較的快適な大腸内視鏡検査を実施し得る手技と考えられる.本研究は,水を用いた挿入法が地域診療所においても実践可能であり,高齢者を中心とした診療環境において有用な選択肢となり得ることを示唆するものである.今後,こうした小規模施設からの実践報告が蓄積されることにより,水浸法の国内での普及と,無鎮静下大腸内視鏡検査の普及が進むことが期待される.
結論
地域診療所においても,一人医師体制のもとで,鎮静薬に依存しない安全かつ快適な大腸内視鏡検査を実施することは可能である.水浸法は高齢者にやさしく,地域医療に適した有用な大腸内視鏡挿入手技である.
謝辞
水浸法の見学をさせていただきました後藤利夫 新宿大腸クリニック院長,消化管内視鏡研修の機会を与えていただきました地域医療振興協会研修事業部ならびに川合耕治 伊東市民病院長,大腸内視鏡検査装置を整備して下さった西伊豆町行政に深謝する.検査の介助を担う,青木弓子看護主任,菊池亜紀看護師に謝意を表する.また,本論文の文法および表現の明瞭性向上のために,ChatGPT(OpenAI 社)を使用した.最終的な内容については著者らが責任を負う.
利益相反 なし
文献
1) 後藤利夫:水浸法による無痛大腸内視鏡挿入マニュアル.中外医学社,2016.
2) 工藤進英:大腸内視鏡挿入法: 軸保持短縮法のすべて.医学書院,2012.
3) Church JM: Warm water irrigation for dealing with spasm during colonoscopy: simple, inexpensive, and effective. Gastrointest Endosc 2002; 56(5): 672–674.
4) Baumann UA: Water intubation of the sigmoid colon: water instillation speeds up left-sided colonoscopy. Endoscopy 1999; 31(4): 314–317.
5) Hamamoto N, Nakanishi Y, Morimoto N, et al: A new water instillation method for colonoscopy without sedation as performed by endoscopists-in-training. Gastrointest Endosc 2002; 56(6): 825–828.
6) Hafner S, Zolk K, Radaelli F, et al: Water infusion versus air insufflation for colonoscopy. Cochrane Database Syst Rev 2015; 2015(5): CD009863.
7) Fuccio L, Frazzoni L, Hassan C, et al: Water exchange colonoscopy increases adenoma detection rate. A systematic review with network meta-analysis of randomized controlled studies. Gastrointest Endosc 2018; 88(4): 589-597.
8) Binmoeller KF, Weilert F, Shah J: “Underwater” EMR without submucosal injection for large sessile colorectal polyps (with video). Gastrointest Endosc 2012; 75(5): 1086–1091.
9) Brechmann T, Aach M, Schildhauer TA: Water exchange technique improves colonoscopy in patients with spinal cord injury: Results of a matched cohort study. Endosc Int Open 2024; 12(3): E394–E401.
Colonoscopy Insertion Technique for Elderly Patients: Application of Water-Immersion in a Rural Clinic
Hitoshi Sasai1, Mikako Takaki1
1Nishiizuchou-Tago Clinic
Corresponding author: Hitoshi Sasai (sasaihei@gmail.com)
Nishiizuchou-Tago Clinic, 943-2, Tago, Nishiizuchou, Kamogun, Shizuoka, 410-3515, Japan
Received 2026 Feb 14/Accepted 2026 Jul 5
Abstract
Objective: To provide safe and comfortable colonoscopy for elderly patients in a rural clinic, we introduced the water-immersion method and examined changes in the non-sedation and cecal intubation rates before and after its implementation.
Methods: We had been performing colonoscopy using a conventional air-insufflation method since 2008. In 2017, we switched to the water-immersion method. We learned the technique using a practical manual and instructional videos, and applied an axis-maintaining shortening method with water infusion and without air insufflation. We retrospectively reviewed electronic medical records and analyzed changes in the non-sedation rate and cecal intubation rate.
Results: After introducing the water-immersion method, we observed reduced abdominal distension and procedural pain. Patients showed less discomfort and less reluctance toward colonoscopy. The non-sedation rate remained consistently high, and the cecal intubation rate improved. We observed no serious complications.
Conclusion: The water-immersion method enables safe colonoscope insertion without reliance on sedative agents and is particularly suitable for elderly patients. This is a practical and feasible technique that can be implemented in resource-limited rural clinics.
Keywords: Water-immersion method, Colonoscopy, Rural clinic, Non-sedated colonoscopy